手取り13万円。家賃を払うと、残るのは数万円です。
これは数年前の私の話ですが、物価が上がった今なら、同じ手取りでは回らなかったはずです。食費を削り、実家から送られてくる米でしのぎ、それでも「保育士ってこういうものか」とどこかで納得しようとしていました。安いのが当たり前、と自分に言い聞かせながら。
でも、本当にそうなのか。仕事量も責任も、隣の正規職員とほとんど変わらないのに、なぜこんなに差があるのか。経験を積めば上がると思っていたのに、手当がなくなっただけで手取りはまた下がる。そんな現実にもぶつかりました。
保育士歴約13年、今はパートで働いています。手取り13万円台で暮らしていたころの現実、保育士の給料はなぜ安いのか、そして2026年以降に本当に上がるのか。私自身の経験をもとに書きます。
保育士の給料は実際いくら?平均年収と手取りの目安
平均月収と手取り平均
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査をもとにした集計では、保育士の平均月収はおよそ24万〜27万円台です。ここから社会保険料や所得税が引かれるため、手取りは18万〜21万円前後が目安になります。
ただし、これは全年齢・全経験年数を含めた平均です。20代や経験が浅い時期は、もっと低いことも珍しくありません。私が臨時職員として認可保育園に入ったころの手取りは13〜14万円でした。家賃を払えば残りはわずか。「平均」という言葉に助けられたことは一度もありませんでした。
ボーナスを含めた平均年収
保育士の平均年収は、賞与を含めて約396万円とされています。年収だけ見ると高く見えますが、実際の暮らしは毎月の手取りで決まります。賞与が少ない園や、そもそも安定しない職場では、体感はかなり変わります。
私が最初に入った幼稚園は、基本給154,000円、賞与4か月分という条件でした。当時の求人の中では悪くない条件でしたが、数字がよくても、無理なく働き続けられるかは別の話です。
初任給の手取りはいくらか
保育士の初任給は、月収18〜20万円前後がひとつの目安です。手取りにすると、15〜17万円前後になることが多いです。
ただ、公立か私立か、地域差があるか、住宅手当や処遇改善がつくかでもかなり変わります。都市部の公立は比較的高めでも、地方の私立では15万円を下回ることもあります。こうした低い初任給が、「安いのが当たり前」という空気を強めてきたのだと思います。
保育士の給料はなぜ安い?「安いのが当たり前」ではない理由
仕事量と責任の重さに、給料が見合わない
子どもの命を預かる仕事です。食事、排泄、けがの対応。保護者への連絡。記録の作成。一日の密度は、給料明細の数字だけでは見えてきません。
それなのに、受け取る額は高くない。保育士は資格が必要な専門職なのに、「子どもが好きならできる仕事」と軽く見られやすいところがあります。実際、知人から「子どもと遊んでるだけでお金をもらえていいね」「俺もやりたい」と言われたことが何度かありました。悪意はないとわかっていても、その言葉は少し刺さりました。そもそも保育所の運営費は国が定める公定価格をもとに決まるため、園が給料を大きく上げにくい仕組みがあります。そこに「子どもが好きならできる仕事」という認識のズレも重なり、長いあいだ給料に反映されにくい状況が続いてきました。こうして、安いのが当たり前という空気が少しずつできていったのだと思います。
持ち帰り仕事や休憩なしが当たり前になりやすい
連絡帳の記入、行事の準備、製作物の下準備。こうした仕事を勤務時間内に終わらせるのは、現実にはかなり難しいです。
私も事務仕事はほぼ持ち帰りでした。後輩が書いたおたよりのチェックも、自分の休憩時間を削ってやっていました。時給に換算したことはなかったけれど、割に合わないと感じたことは何度もあります。そのたびに「仕方ない」と飲み込んで、また次の日が始まる。その繰り返しでした。
臨時と正規で仕事内容が同じでも給料に差が出る
これが、私がいちばん理不尽だと感じていたことです。
若い臨時職員や入ったばかりの人に、「運動会で何をやるか考えてきて」「発表会のピアノ、立候補するものだよ」と仕事が回ってくることがありました。経験が浅くても、任される中身は軽くありません。一方で、そういう仕事をうまく避けられる正規職員のほうが、給料は高い。仕事の中身はほとんど変わらないのに、です。
安いのが当たり前、という感覚がいつの間にか染みついていたのは、こういう場面を何度も経験してきたからかもしれません。給料の差に疑問を持つことすら、どこか悪いことのように感じていました。
手取り13万で暮らしていたころの現実
もやし炒めと納豆ご飯でつないだ生活
給料日が来ると、まず家賃を払いました。通帳の数字が減るのを見たあと、光熱費と通信費を頭の中で引き算する。残るのは、食費と細かい出費ぶんだけでした。
食費はとにかく削りました。実家から送られてくる米が頼りで、おかずはもやし炒めか納豆ご飯。インスタントラーメンを5食入りで買って、5日分にする。それが普通でした。今思えば、かなりギリギリの生活です。
物価が上がった今、同じ手取りで一人暮らしをしたら、あのころよりずっと苦しいはずです。
保険を解約して旅行代を払った話
働き始めて少し経ったころ、友人たちと旅行の話が出ました。行きたい気持ちはあった。でも給料日前で、手元にお金がありませんでした。
費用を払う期限が迫っていて、どうしようかと考えた末に選んだのが、積み立てていた保険の解約でした。返戻金を旅行代に充てた。当時はそれしか方法が思いつかなかったし、それをおかしいとも感じていませんでした。
こうして、「安いのが当たり前」という感覚が染みついていきました。お金がないから削る、あきらめる、崩す。その順番しかないことに、当時は慣れてしまっていました。
経験を積んでも給料が見合わないと感じた理由
住宅手当が出た時期だけ少し楽になった
臨時から正規になり、経験年数が増えるにつれて年俸は少しずつ上がりました。それ自体はありがたかったです。でも、生活が変わったと実感したのは、昇給よりも住宅手当が出たときでした。
月2万5千円の住宅手当がつくと、手取りが15万円を少し超えました。それだけで、月末の引き算が少し楽になる。食費を少し増やせる。たった2万5千円でも、生活の息苦しさはかなり変わりました。
手当がなくなると経験年数が増えても逆戻りした
結婚して世帯主ではなくなったとき、住宅手当の支給がなくなりました。経験年数は8年、9年と積み重なっていたのに、手取りはまた13万円台に近づいていきました。
昇給はしていました。でも、手当ひとつがなくなるだけで、その分はあっさり消えます。経験を積んでも、制度や手当の条件次第で手取りは簡単に変わる。保育士の給料は、基本給だけでは見えない部分が多いです。
報われたと感じたことは一度もなかった
10年近く勤めて、仕事の幅も責任も広がりました。後輩の指導、行事の取りまとめ、保護者対応。でも、そこに見合うだけ給料が上がったかというと、正直そうは感じませんでした。
給料が仕事に見合わない、という感覚は、経験を積むほどむしろはっきりしていきます。それでも辞めなかったのは、給料以外のところに支えられていたからです。子どもと過ごす時間、同僚との関係、仕事そのものへのやりがい。そういうものがなければ、続ける理由を見つけられなかったと思います。
保育士の給料は今後上がる?2026年の動きも解説
保育士の給料は上がる流れにある
結論から言うと、保育士の給料は少しずつ上がる方向に動いています。ただし、その変化を実感できるかは園によってかなり差があります。国が処遇改善を進めており、保育士の給与水準を引き上げる加算制度が段階的に拡充されてきました。以前よりは、処遇改善が手取りに反映されやすい園も出てきました。
保育士の給料はいつから上がる?
保育士の処遇改善はここ数年で段階的に進んできました。急に2026年から一律で大幅アップするというより、処遇改善加算の見直しや配分の変更を通して、少しずつ反映されてきた流れです。2022年には月額9,000円程度の引き上げを目的とした臨時特例事業が実施され(厚生労働省「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」)、その後も継続的な加算として組み込まれています。「いつから上がるのか」と言われると、もうすでに少しずつ始まっている、というのが実態に近いです。
保育士の給料が2026年に5万上がるは本当?
「2026年に5万円上がる」という情報を見かけることがありますが、全員の給料が一律で5万円上がるわけではありません。処遇改善加算や役職手当を合計した数字として語られることがあり、実際の受け取り額は園の申請状況や配分方法で変わります。
処遇改善加算は、園が申請して初めて支給される仕組みです。加算を取得していない園では、恩恵が届かないこともあります(こども家庭庁「子ども・子育て支援」)。上がる流れは本物です。ただ、どの園で働くかによって、実感できるかどうかは大きく変わります。
平均が上がっても全員に届くとは限らない
統計上の平均給与が上がっていても、自分の手取りが増えているかは別の話です。処遇改善の恩恵を受けられているかどうかは、働いている園の経営方針や申請状況によって変わります。
「保育士の給料は上がっている」というニュースを見て、自分の明細と見比べて首をかしげたことがある人も少なくないはずです。制度が整ってきているのは事実です。でも、それが自分に届いているかは、求人票や給与明細を見ないとわかりません。
今は給料より働きやすさを重視している
長く働いてきて感じるのは、給料だけで職場の良し悪しは決まらないということです。お金は大事です。でも、休みたい日に休めるか、朝に職場へ向かう足が重くならないか。そういうことのほうが、毎日の暮らしには響きます。
給料だけで職場を選ばなくなった今の話
時給1,200円の今の働き方
パートになってから、収入は正規時代より下がりました。時給1,200円、週5日、1日5時間の勤務。扶養も抜けて働いています。決めるまでには葛藤もありました。
金額だけ見れば、決して高い水準ではありません。でも、今のほうが生活は安定しています。子育てをしながら無理なく働けているのは、休みが取りやすい職場だからです。子どもの体調不良で急に休んでも、フォローし合える関係がある。それだけで、仕事を続けるハードルはかなり下がります。
給料より居心地を優先した理由
正規で働いていたころを振り返ると、給料への不満はずっとありました。でも、それだけを理由に辞めるのは、どこかぜいたくのように感じていました。
給料以外に職場を辞めたくなる理由として多いのが人間関係です。保育士の職場の人間関係がつらいと感じたときの話は、保育士の人間関係に疲れたら読む記事|改善策と逃げ方にまとめています。
同じ保育士でも、働く場所によって手取りも働きやすさも変わります。今の園だけがすべてではない。長く働いてきたからこそ、そう思います。
よくある質問
- 保育士の給料はなぜ安いのですか?
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保育所の運営費は国が定める「公定価格」をもとに決まるため、園が給料を大きく上げにくい構造があります。さらに、保育士の仕事は軽く見られやすく、専門職としての評価が給料に反映されにくい面もあります。持ち帰り仕事や休憩の取りにくさも重なり、実質的な時給は低くなりがちです。
- 保育士の給料が安いのは当たり前ですか?
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当たり前ではありません。ただ、業界全体にそういう空気が長くあったのは事実です。園によって条件差は大きいので、「安いのが当たり前」と決めつけないほうが実態に近いです。
- 保育士の給料は今後上がりますか?
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少しずつ上がる方向に動いています。国の処遇改善加算が段階的に拡充されているためです。ただし、実際にどこまで反映されるかは園によって差があります。
- 保育士の給料は2026年に上がりますか?
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一律で大幅に上がるわけではありません。処遇改善の加算は続いていますが、実際の反映は園の申請状況や配分方法によって変わります。
- 保育士の給料が5万上がるのは本当ですか?
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全員が一律で5万円上がるわけではありません。加算や役職手当を合計した数字として語られることがあり、受け取り額は園ごとに違います。
- 保育士の初任給の手取りはいくらですか?
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月収18〜20万円前後が目安で、手取りは15〜17万円程度になることが多いです。公立か私立か、地域や手当の有無でも変わります。
- 保育士の給料は仕事に見合わないですか?
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見合わないと感じる人は多いです。仕事の密度や責任の重さに対して、給料が追いついていないと感じやすいからです。経験を積むほど、その差を強く感じることもあります。
- 保育園と幼稚園どちらが給料いいですか?
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一概には言えません。公立か私立か、地域、手当、賞与の有無でかなり差が出ます。名前だけで比べるより、求人ごとの条件を見るほうが確実です。
保育士の給料、今の園だけで判断しなくていい
保育士の給料が安くなりやすいのは、構造的な問題があるからです。公定価格の仕組み、仕事の重さに比べて軽く見られやすいこと、見えない残業。どれかひとつではなく、それが重なってきた結果です。
処遇改善の流れは確かにあります。ただ、制度が整っても、それが自分に届いているかは別の話です。同じ保育士でも、働く場所によって手取りも働きやすさもかなり変わります。
給料に不満があるなら、今の職場だけを基準にしないことが大事です。すぐ転職しなくても、他の園の条件を見てみるだけで選択肢は広がります。
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